正方形キャンバスに正方形を描く。
これは2021年、カジミール・マレーヴィチの「黒の正方形」をオマージュとして制作した、
正方形のキャンバスを2枚組み合わせた立体作品が元になっており、制作後ずっと私の頭の片隅に残っていた。
それは、自らが生み出した作品から発せられる、訴えというか言葉、そういったものを初めて感じたからかもしれない、と今になって考える。
私は近年、いわゆる抽象表現主義志向のオールオーバーな画面を描いてきたのだが、
2022年末あたりから、壁に掛けられた架空の抽象絵画をモチーフとしている。
モチーフは紙に印刷された絵なのだが、キャンバスに絵の具をのせるとそれは凹凸・絵の具の輝き・筆致を得て生き生きと生まれ変わる。
私がモチーフとする架空の絵画はAIで生成しているが、完成した絵を見ると、デジタルとアナログの違いというか、写真や印刷物には埋められない、絵画の生々しさをまざまざと感じるのである。
私にとってそれは、壁にかけられた抽象絵画を描いた、具象絵画でもあるのだが、果たして抽象と具象の境目はどこにあるのか。
あなたが観ているものは一体何なのか、固定観念を取り払い、観る者に多方向からの問いかけを与えたい。
2023.1.29 武藤江美奈